第3話:「マニュアルを超えた行動力」を。金融機関の防災訓練×次世代リーダー育成

- 登場人物
- 黒田: ○×銀行 人事部 人材開発担当課長。若手の離職や、マニュアル通りの行動しかできない組織風土に危機感を持っている。
- PORT担当: PORT プロジェクト担当。防災訓練を「有事の意思決定トレーニング」と捉え直し、人事課題の解決策として提案する。
【モデルケース】
金融機関の人事担当者様との会話シミュレーション。防災訓練を「次世代リーダー育成」や「エンゲージメント向上」の機会と捉え直す、実践的な人材育成プログラムのご提案です。

PORT担当
本日はお時間をいただきありがとうございます。事前に『地域とともに歩む金融人材の育成』という大きなテーマを伺っておりました。まずは、黒田様が現在の人材育成や研修現場で特に課題だと感じていらっしゃる点からお聞かせいただけますでしょうか。

黒田
はい。銀行ですのでBCP(事業継続計画)は策定済みですし、マニュアルも分厚いものがあります。ですが、正直に申し上げると『魂が入っていない』のが現状です。
災害時の訓練も行っていますが、あくまで『避難経路の確認』や『安否確認メールの返信』といった手順の確認に留まっています。
いざ地域の方々が困っている時に、当行の行員がマニュアルを超えて主体的に動けるかというと……そこは非常に心許ないというのが本音です。

PORT担当
なるほど。形式的な『手順の習得』にはなっていても、予期せぬ事態での『判断力』や『行動力』を養う場にはなっていない、ということですね。
もう一点、若手社員の方々のエンゲージメントについても課題に挙げられていましたが、そのあたりと災害対応はどう関連しているのでしょうか?

黒田
そこが実は一番の悩みでして。
最近の若手は『地域貢献したい』という志を持って入行してくるのですが、最初の数年はどうしても事務作業や数字の管理が中心になります。そこで『自分が何のために働いているのか』を見失って辞めてしまうケースが増えているんです。
地域貢献イベントなどは営業推進部が企画しますが、若手は『手伝い』として駆り出されるだけで、自分事になっていない。
人事としては、彼らが『地域のインフラを支えている』という誇りを実感できるような、もっと手触りのある研修ができないかと模索しています。

PORT担当
非常によく分かります。若手の方々にとって、銀行業務の社会的意義を肌で感じる機会が必要なんですね。
それでしたら、従来の『受動的な防災訓練』を、あえて『課題解決型のワークショップ』に変えてみるのはいかがでしょう?
例えば、被災状況をシミュレーションし、『店舗のシステムがダウンし、現金も不足している中で、地域住民のために銀行として何ができるか?』をチームで議論し、模擬決定させるようなプログラムです。

黒田
『銀行として何ができるか』を議論させる……ですか。
これまでの訓練は『いかに早く逃げるか』ばかりでしたが、確かにそれでは業務継続や地域支援にはつながりませんね。
ただ、現場の行員にそこまでの判断を求めても、混乱するだけではないでしょうか?

PORT担当
おっしゃる通り、いきなり正解を求めるのは難しいです。しかし、このプロセスの狙いは正解を出すことではなく、『平時の常識が通じない状況で、優先順位をつける』という意思決定の訓練そのものにあります。
実はこれは次世代リーダー育成(リーダーシップ研修)と非常に相性が良いんです。
『地域を守るために自分たちが動く』という体験は、若手の方にとっても『銀行員の使命』を再認識する強烈な原体験になります。結果として、離職防止やエンゲージメント向上にもつながる効果が期待できます。

黒田
なるほど、防災訓練を『リーダー研修』や『チームビルディング』として再定義するわけですね。
それなら『また避難訓練か』と敬遠されることもなく、若手にも『自分たちが地域を支える主役だ』というメッセージが伝わりそうです。
営業部門任せにしていた地域貢献を、人事主導の『教育』として取り込めるイメージが湧いてきました。

PORT担当
ありがとうございます。銀行員としての規律と、有事の柔軟性。この両方を学ぶ場としてデザインできるはずです。
もしよろしければ、既存の階層別研修(例えば入行3年目研修など)の一部に組み込めるような、短時間で実施可能な『地域防災×意思決定シミュレーション』のカリキュラム案を作成してみましょうか?

黒田
ぜひお願いします!
来期の研修計画をちょうど詰めているところですので、単なる防災イベントではなく、『人材育成プログラム』として決裁が取れるような内容にしていただけると助かります。
ご提案
「防災×チームビルディング」次世代の金融人材を育む防災研修プログラム
- プログラム案: 「発災後72時間の店舗運営シミュレーション(仮)」など、銀行業務に特化した判断訓練
- 学習効果の定義: 防災知識だけでなく、リーダーシップ、チームワーク、地域への帰属意識(エンゲージメント)向上といった教育効果の明記
- 導入イメージ: 既存の新人・若手研修に3時間程度で組み込めるモジュール形式での設計