第2話:「見えない備え」を共感に変える。通信キャリアの広報・ブランディング戦略

- 登場人物
- 菊池: 通信企業 ○×リンク株式会社 広報部 社外コミュニケーション担当。災害時の「つながる安心」を伝えたいが、プレスリリース止まりの現状にもどかしさを感じている。
- PORT担当: PORT プロジェクト担当。課題を掘り起こし、整理し、新たな可能性につながる提案を行うプロフェッショナル。
【モデルケース】
通信キャリアの広報担当者様との会話シミュレーション。インフラの強みや防災アプリの価値を、生活者向けの「体験」に変えて伝える、新しい広報・ブランディング戦略のご提案です。

PORT担当
本日はお時間をいただきありがとうございます。広報戦略についてのご相談とのことで伺いましたが、御社のような通信キャリアにとって、『災害対応』は企業の信頼性に直結する重要なテーマかと存じます。まずは現状、対外的な発信でどのような点に難しさを感じていらっしゃるか、菊池様の実感をお聞かせいただけますか?

菊池
はい。実は、災害協定の締結や、基地局のバッテリー強化など、裏側ではかなりコストをかけて対策しているんです。
ただ、それを広報として発信しても、どうしても堅苦しい『お知らせ』や『プレスリリース』止まりになってしまって……。
いざ災害が起きた後なら注目されますが、平時に『うちは災害に強いです』と言葉だけで伝えても、一般のお客様やメディアにはなかなか響かないのが悩みですね。

PORT担当
なるほど。インフラという性質上、平時は『使えて当たり前』と思われがちですから、その『備え』の価値を伝えるのは非常に難しい課題ですよね。
もう一点、事前に『自社防災アプリの利用促進』についても課題に挙げられていましたが、こちらはどのような状況でしょうか?

菊池
そこも苦戦していまして……。災害時に避難所のWi-Fi情報などを配信するアプリなんですが、ダウンロード数が伸び悩んでいます。
正直なところ、お客様からすると『災害が起きてから入れればいいや』という心理があるようで。
高齢者の方や、日本に慣れていない外国人の方にも使ってほしいのですが、デジタル接点だけでは限界を感じています。どうすれば『普段から入れておこう』と思っていただけるのか……。

PORT担当
非常によく分かります。アプリのようなデジタルツールこそ、実は『アナログな体験』とセットにすることで、必要性が伝わることが多いんです。
例えばですが、地域向けの防災イベントの中で、あえて『通信手段が遮断された状況』を疑似体験してもらうゲームなどは考えられませんか?
『情報が取れない怖さ』を安全な環境で体験して初めて、『だからこのアプリが必要なんだ』『○×リンクがつながるのは凄いことなんだ』と実感していただけると思うのですが。

菊池
『遮断された状況を体験する』……ですか。それは面白い切り口ですね。
これまでは『つながります、便利です』というプラス面ばかりアピールしていましたが、逆転の発想ですね。
ただ、通信会社である私たちがリアルなイベントを主催するとして、地域の方にとって参加するメリット、と言いますか、参加のハードルはどうでしょうか?

PORT担当
そこは『スマホを使った防災訓練』として打ち出すのが効果的です。
今の時代、被災時に一番頼りになるのはスマホですよね。
『災害時にバッテリーを長持ちさせる設定方法』や『災害用伝言板のデモ体験』、あるいは御社のアプリを使って避難所のQRコードを読み込むスタンプラリーなど、スマホを軸にすれば、若年層から高齢者まで『自分事』として参加しやすくなります。
結果として、それが御社の『災害時の対応力』というブランドイメージの向上に直結するはずです。

菊池
なるほど! 『スマホ教室』の延長線上で『防災』を学べるなら、高齢者の方も集まりやすいですし、アプリのインストールもその場でサポートできますね。
経営層からも『災害対応の確実さをブランド力にしろ』と言われているので、単なる広報発表ではなく、そうした『地域の方との接点』を作る施策なら、年間の広報プランにも組み込みやすそうです。

PORT担当
ありがとうございます。御社だからこそできる『情報ライフライン』としての強みを、イベントという形で可視化するイメージですね。
では、まずは御社の既存アプリや災害対策の強みを活かした、一般生活者向けの体験型イベントを通じた広報・ブランディング戦略を検討してみましょうか?

菊池
ええ、ぜひお願いします。
特に『情報弱者へのサポート』というCSRの観点と、『災害に強い○×リンク』というブランディングの両立ができるような案だと非常に助かります。
ご提案
「通信×防災」体験型イベントを通じた広報・ブランディング戦略策定支援
- 戦略コンセプト: 平時には実感されにくい「インフラの価値」を、生活者が体で理解できる体験として見える化し、納得感を少しずつ積み重ねていく広報設計
- 主要施策(体験接点): 「スマホで生き残る防災サバイバル(仮)」など、災害時に役立つ強みを平時の体験に置き換え、サービスの価値を実感として持ち帰ってもらう体験プログラムの開発
- 展開シナリオ(CSR・広報): 体験の中で生まれた気づきやエピソードを広報素材として整理し、高齢者支援などのCSR活動と連動。継続的な発信を通じて、アプリ利用とブランドへの信頼を段階的に高めていく仕組み