静岡県熱海市網代(あじろ)。かつて「京大阪に江戸網代」と謳われたこの港町で、新しい関係人口創出の試みである「えびわけ交流会 in あじろ」が開催されました。
今回は、このイベントにゲストとして参加したPORTメンバーを代表して須藤氏に、PORT編集部 (AI) が当日の体験や、網代という土地が持つ可能性について話を伺います。

――今回は、熱海・網代での「えびわけ交流会」に参加されたとのことですね。まず、「えびわけ」とはどういう意味なのでしょうか?
「Everyday Workation(エブリデイ・ワーケーション)」を略して「えびわけ」だそうです。
今回の交流会は、「網代を訪れ、地域の文化・人・自然に触れ、“関わりしろ”を感じる2日間」をコンセプトに開催されました。私たちを含む十数名が参加し、ほとんどが「網代初心者」というメンバーで、1泊2日を共に過ごしました。
――実際に足を踏み入れた網代は、どんな町でしたか?
網代を訪れてまず印象に残ったのは、生活と風景の距離の近さでした。観光地化された場所では、どうしても生活感が裏側に隠されがちです。しかし網代では、港と町の距離が驚くほど近いんです。漁港は観光用の舞台ではなく、現役の仕事場として、日常の中に存在しています。
干物の匂いが路地から漂ってくる光景に、古くからの「漁師町」としての色が色濃く残っていることを感じました。
完成された物語が前面に出されていない分、訪れる側が自分なりの関わり方を探せる「余白」が残されている。そんな無防備さと誇り高さが同居している、不思議な魅力を持った町でした。

――「余白」があるからこそ関わりたくなる、というのは面白い視点ですね。今回はどなたが案内してくれたのですか?
一般社団法人あじろ家守舎の山崎さんと、熱海市地域おこし協力隊の三ツ井さんです。 山崎さんは地元ご出身でUターンされた方、三ツ井さんは秩父での活動を経て熱海に来られた方ですが、お二人の地域に対する熱量と、関係性の深さには圧倒されました。
街を歩いていると、すれ違う人ごとに自然と挨拶を交わされている。その様子から、単に歴史や文化に詳しいだけではなく、地域の方々と深い信頼関係を築いてこられたことが伝わってきます。
お二人に案内していただいたおかげで、私たちのような外部の人間も、無理なく網代の懐に入ることができました。もしお二人がいなければ、ここまで有意義な時間にはならなかったと思います。


――地元の方との信頼関係がベースにあったんですね。食事やスポットで印象に残っているものはありますか?
個人的にとても印象に残ったのが、ランチで伺った「BUSHI MESHI(ブシメシ)」さんです。網代の伝統的な街並みの中に自然に溶け込みながら、一歩足を踏み入れると、空間も体験も驚くほど洗練されている。そのコントラストが、この場所のユニークな魅力だと感じました。
看板メニューの「ほやほや削りごはん」は、削りたての鰹節を贅沢にご飯にのせたシンプルなどんぶりとして強いインパクトがあります。見た目の華やかさと香りだけでなく、目の前で削りたてをどんぶりに乗せてくれる場面は、食べるだけでなく“体験”にも昇華し、伝統と現代性を同時に味わえる点で特別です。
また、二階には海を望む事務所があり、こちらも洗練された心地よい空間でした。従業員エンゲージメントを大切にされていて、店舗を含め土日休みを実現するなど、働き方にも明確な思想が感じられます。
BtoBを主軸にしながら、BtoCとしての場をつくり、地域住民と観光客の双方を迎え入れる。この仕組みは、持続可能な地域共創のモデルとしても示唆に富んでいます。
社長やスタッフの方々の丁寧で誠実な姿勢からは、この店が単なる飲食店ではなく、「どう地域と共にあり続けるか」を真剣に考えていることが伝わってきます。BUSHI MESHI は、伝統と現代性、食と仕事、地域と外部を静かにつなぐ存在として、他の地方にも紹介したくなるロールモデルだと思いました。

――削りたての鰹節、想像しただけでお腹が空いてきます……! 他にはどんな体験を?
1日目の夕方には山に登って、みんなで夕日を見ながら網代について語り合いました。あの時の夕日の柔らかさは忘れられません。

2日目の朝は、地元の干物屋さんで好きな魚を買って、ひたすら干物を食べるという贅沢な時間を過ごしました。焼き担当をして頂いた三ツ井さんありがとうございました!

――参加者の方々とはどんな雰囲気でしたか?
「網代を盛り上げるために何ができるか」を自然と一緒に考え始めるような、前向きな一体感がありました。 ただのお客さんとして消費するわけではなく、かといって仕事のプロジェクトのように成果を求められる堅苦しさもない。その絶妙な「緩やかさ」がとても心地よかったです。
参加者の多くが網代については詳しくない状態でしたが、だからこそ「手探りで、いま自分たちにできることは何か」を真剣に考えつつ、そのプロセス自体を楽しんでいるような空気感がありました。 結果として、地域への貢献に向かっての「関わりしろ」を感じた人もいれば、理屈抜きに「ただ癒やされた」という人もいて。その、合目的的なだけではない多面的なつながりが、この会の豊かさだったと思います。
2日間を通して、これほど気持ちよく過ごせたのは、参加者の皆さんのおかげです。貴重な機会を、本当にありがとうございました。
――最後に、今回の体験を通じて感じた可能性について教えて下さい。
網代には「考えがいのある関係性の余白」がたくさん残されています。 移住か観光か、事業かボランティアかといった二択ではなく、複数の関わり方が重なり合う状態をどうつくるか。そのためには、誰がどのように関わり、どのように楽しむのかという関係性の設計が重要になります。
網代は、未来のかたちが一つに定められていない地域です。だからこそ、皆で未来について考え、それを選択肢として描ける「状態」を整えることができます。
今回の交流会は、その可能性を強く感じさせてくれる場でした。ゲストとしての参加ではありましたが、そこには継続的な関係が育つ余地が、確かに存在していました。
私たちが大切にしている視点とも重なる部分が多く、今後につながる手応えを得られた2日間だったと感じています。
――未来を決めるのではなく、未来を描ける「状態」を整える。その「関係性のデザイン」こそが、網代の新しい可能性を拓く鍵になりそうですね。ありがとうございました!

【イベント概要】
イベント名:えびわけ交流会 in あじろ
日時:2026年1月27~28日
場所:静岡県熱海市網代エリア
案内:一般社団法人あじろ家守舎、熱海市 地域おこし協力隊
訪問スポット:あじろむすび、BUSHI MESHI、阿治古神社、和菓子舗 間瀬、海の味処 笑ぎょ ほか
公式サイト:えびわけ交流会 in あじろ
