研修2025年6月30日執筆: 荻原妃史

【研修開催報告】現場の「もしも」を「確信」に変える。越谷市消防職員向け 水の事故発生時の初動対応研修

最新の水難事故事例と具体的な現場エピソードをもとに、講話・講義・トークセッションを組み合わせて、経験年数や世代を超えて知識と意識をそろえていくプロセスをご紹介します。

【研修開催報告】現場の「もしも」を「確信」に変える。越谷市消防職員向け 水の事故発生時の初動対応研修

「“事故発生直後の溺者(生存者)”へのアプローチを、実は学んだことがない」
「隊員間の年齢ギャップがあり、水難救助に関する共通認識を形成しづらい」
「専門の装備があっても、本当に安全な初動対応ができるか不安がある」
これは、命を救うプロフェッショナルである消防職員の方々から、私たちが事前ヒアリングで伺った切実な声です。日々、様々な現場で市民の安全を守る皆様でさえ、特定の分野においては体系的な知識習得の機会や、組織内での技術標準化に課題を抱えていらっしゃいました。

株式会社Symphony Innovationsは、2025年6月28日(土)、埼玉県越谷市消防職員協議会様からのご依頼を受け、越谷市消防局の職員およそ20名を対象とした「水の事故発生時の初動対応研修」を企画・実施いたしました。

本レポートでは、私たちがどのように現場の課題を紐解き、研修を設計し、そして参加者の皆様の行動変容に繋げたか、そのプロセスをご報告します。

◆ 課題解決への最適解を導き出す、オーダーメイドの研修設計

私たちは、画一的な研修プログラムを提供するだけでは、真の課題解決には繋がらないと考えています。今回、越谷市消防職員協議会様が目指されていたのは、以下の3点でした。

  1. 「事故発生直後の溺者(生存者)」に対する正しい初動知識の習得
  2. 職員自身が、家族や仲間を守るための知識の習得
  3. より実践的な「実技研修」開催への機運醸成

これらの目的を達成するため、私たちは各分野の専門家を招聘し、「講話」「講義」「トークセッション」の3つの要素を組み合わせた立体的なプログラムを設計。参加者の皆様が、明日からの現場活動に活かせる学びを提供することを目指しました。

◆ 多角的な視点が、現場の思考を深める

研修は、異なるバックグラウンドを持つ3名の講師による、多角的なアプローチで展開されました。

1.講話:小川講師 「公務員としての使命と安全管理」

教育者として多くの自衛隊員へ危機意識を指導して来られた、小川講師からは、3.11(東日本大震災)の実際の経験を交えながら、消防・警察・自衛隊という組織の役割の違いと、有事を想定した際の安全管理の考え方についてお話しいただきました。これは、日々の業務をより広い視野で捉え直し、自らの使命を再確認する貴重な機会となりました。

2.講義:工藤講師 「最新事故事例から学ぶ、溺れないための救助」

日本赤十字社や日本ライフセービング協会にて、長年に渡り水の事故に関する研究と事故防止や救助の指導を実施されて来られた、工藤講師。最新の水難事故事例の紹介は、参加者に大きなインパクトを与えました。「ライフジャケットを着ていても溺れる」「コップ一杯の水があれば人は溺れてしまう」といった事実は、水の危険性に対する認識を新たにさせました。
講義の後半では、スローロープやレスキューチューブを実際に手に取り、「入水しない救助」という大原則を資材の観点からも再認識。更には、装備が限られた状況下での最善策を学びました。

3.トークセッション:江口講師 × 荻原supervisor 「現場のリアルと次の一手」

元消防職員である江口講師と弊社荻原によるトークセッションでは、江口講師が過去、現場で体験した具体的な対応事例や、他組織との連携の実際について深掘りしました。参加者と同じ目線を持つ講師の話は、現場の「あるある」という共感と、「そんな方法があったのか」という発見を生み出し、質疑応答も活発に行われました。

◆ 「次の学びへ」ー参加者の声が証明する研修の成果

研修後のアンケートからは、今回の研修が参加者の皆様の意識に確かな変化をもたらし、次のステップへの強い動機付けとなったことが伺えます。

Q.特に印象に残ったことは?

「想定していたより多くの方が亡くなっていること。改めて水の危険性について学べました。」
「ライフジャケットを着ていても溺れる可能性があること。思い込みの危険性を感じた。」
「コップ一杯分の水があれば人は溺れられることに驚いた。事故の事例もあったため、身近に感じた。」

最新のデータとリアルな事例が、経験豊富な職員の方々の固定観念を揺さぶり、知識のアップデートに繋がったことが分かります。

Q.もっと深く学びたいと感じたテーマは?

アンケートでは、ほぼ全ての参加者が「体験型の実技研修(救助技術)」を希望されました。さらに、「溺者に対するアプローチ」「身近なものを使った救助法」といった、より実践的なスキルへの渇望が多く見られました。

座学を通して「なぜ学ぶ必要があるのか」を深く理解したからこそ、次の「どうやるのか」という実技への学習意欲が最大限に高まったのです。これは、協議会様が目的とされていた「実技研修開催への機運醸成」が、見事に達成されたことを示しています。

◆ 終わりに ー 組織の課題を「成長」へと転換する研修を

私たちSymphony Innovationsは、組織が抱える漠然とした不安や課題を丁寧にヒアリングし、分析し、その組織のためだけの最適な研修プログラムを設計・実行することを得意としています。

今回の研修が、越谷市消防局の皆様が次のステップへ進むための、大きな推進力の一助となれたのであれば幸いです。

「職員のスキルを標準化したい」
「特定の分野における専門知識を強化したい」
「研修を通して、組織の一体感を醸成したい」
このような課題をお持ちの企業・団体の人事・研修ご担当者様、ぜひ一度、私たちにお話をお聞かせください。貴組織の未来を共に創るパートナーとして、最適なソリューションをご提案いたします。


【研修概要】
日時:2025年6月28日(土)14時〜16時
場所:越谷市消防局大袋分署
主催:埼玉県越谷市消防職員協議会
対象:埼玉県越谷市消防局職員(20名参加)
研修内容
・講話「自衛隊員教育の中での体験談」
・講義「水難事故と要因/場所別留意点/水難事故の現状/事故防止と救助法」
・トークセッション「戸田市消防局における水難事故初動対応の事例と訓練」

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